喃語(なんご)っていうのがあるんですね。
赤ちゃんが発する、まだ言葉になってない言葉、みたいなものだというのですね。
例えば、ンマアンマア、とか、マンママンマ、とかバァバアとか。こういうのを喃語というらしい。
うちの娘は、私が知るかぎりですが、喃語を発しているのを聞いたことがないのです。(0歳8ヶ月)
聞いたことあるのは、悲鳴に似た声と、ウー、アー、だけなんです。
ものの本を読んでみると、4ヶ月くらいから喃語を話します、とかなんとか。
それで、少し心配になって、
妻に「日中に喃語発してる?」と聞いたら、「気にしてないけど、少し言ってると思う」というのです。
悲鳴のような声はよくあげているが、それは喃語じゃない。
あー、だけとか。ウー、だけとかも喃語とは呼ばないというんですね。
そこで妻が日中、少し気にして聞いておき、私に報告するということになりました。
やや日が経ち、私が帰宅後、妻に、
「あれから喃語の方はどう?」と聞いてみた。
「3回くらいかな、ブワッっとかブバーブバーっとか言ってたよ」
「良かった」
しかし、良かったとは言ったものの、それがどんな感じで言っているのかはわからないでおりました。
休みの日になり、私は自分のこの耳で聞きたいと、娘にべったりでした。
娘の些細な発声をも逃さないようにと。
娘はいつも通りテレビを見たり、おもちゃで遊んでおります。
たまに、悲鳴に似た甲高い声を出すが、午前中、喃語は出なかった。
午後、家事をやっていた妻が居間に現れて、娘を抱っこしました。
その時です。
娘が口を動かしながら、ブバァ、と言ったではありませんか。
続けて、「ブバァ、ブベラ、バァ」と。
私は、驚きました。
今、目の前で娘が喃語を。
それも途中、あの北斗の拳で出てくる名セリフ「ブベラ」が混じっている。
発声の難しい破裂音。
唇に、口内から空気を当てて震わせ発する、ブ、べ、ラ。
これは喃語の中でも言うなれば、北斗の拳ではなく、北斗の喃だ。
私は、妻に抱っこされている娘を指差し「お前はもう、言っている」と喜んでいた。
「すごい喜んでるね」と妻。
「ブベラって言ってたから」と私。
「は?ぶべら?」
「そう、ブベラ」
「ぶべら?」
(妻、まさかブベラを知らない?)
ブベラについて説明しますと、
北斗の拳という漫画の中で、パンチをくらった敵が痛くて「ブベラ!」とか「ひでぶ」とか言うのです。
でも、そんなこと知らなくてもいい、と思いました。
それよりも。
それよりも娘が、初めて「ブベラ」と言ったのであります。
ウーとか、アーではない。
嬉しい!
娘から発された喃語、今日私はちゃんと聞いたのでした。
「ブベラ」と
君が言ったから、
12月1日は「ブベラ記念日」。